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『万事快調〈オール・グリーンズ〉』/太戸呂の映画鑑賞(と読書記録:波木銅 著)

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『万事快調〈オール・グリーンズ〉』/太戸呂の映画鑑賞(と読書記録:波木銅 著) https://www.culture-pub.jp/allgreens/ 

202512月初めから年末年始を越えて2月末までどっぷり日本にいたので、感想文、記録したい映画や出来事がいくつかあります。一部はFACEBOOKUPしたり、ウイチャットで報告したり速報的に書き残しましたけど。ブログにも記録しなけりゃいけない書籍がいくつかあります。でも、まずは最近感動した映画作品から、面白くて原作の小説も読んでしまいました!

  若い友人(といっても30代後半())で映画鑑賞の師匠でもあるHIRO君から、中国に戻る前々日にチャットをいただきました。曰く、「『万事快調 all greens』 令和の『リンダ リンダ リンダ』 まだみてないならぜひ」とのこと。なるほど、師匠がそこまで(ってどこまで?)いうのであれば、観に行かねばと、決心。最新、更新、興味津々。228日土曜日、池袋シネマロサに観に行ってきました。

 映画『リンダ リンダ リンダ』は去年の夏、上映20周年ということで4K版が上映されたので観に行ったことをHIRO師匠に話しておりました。高校の文化祭で、韓国人留学生をヴォーカルにして女子高生がブルーハーツの曲目を唄うまでの出来事を追った、シンプルといえばシンプルなストーリー。ブルーハーツをコピーバンドする女子高生たち、これだけで青春賛歌になっちゃっていました。そうか、師匠曰く、『万事快調』は令和の『リンダ リンダ リンダ』なのか、青春賛歌なのか、と思いながらいそいそとシアターの座席についたのでした。

 いやあ、いい意味で自分の想定したものから外れて、スバラシイ。よかった、

「青春って、矢口さんみたいのを言うんでしょ。クラスでみんなで騒いで、部活、恋、友情、努力、勝利、絆。卒業なんてしたくなーいって」

「そういうのは漂白された青春のステレオタイプだから。全部嘘ぱっちだよ。朴秀美みたいにやりたいことをやってるのが青春っていうんじゃない?」

とかいう会話をダブル主役の南沙良(朴秀美役)と出口夏希(矢口美流紅役)が映画の始めの部分でやりあいます。舞台は茨城県下の工業高校(もちろん架空)ということもありクラスには女子が3人。クラスの中心で明るく振舞う矢口美流紅、授業には投げやりながらも、夜はJR東海駅の前でサイファー(フリースタイルラップ)に参加している、そしてもうひとり漫画好きなオタク系女子高生・吉田美月喜(岩隈真子役)の3人が遺法薬物を栽培、販売しながら“青春を謳歌”するストーリー、なのかな。でも、そんなシンプル?なストーリーの中で三人三様の家庭環境や自分自身がかかえるコンプレックスを出し合いながら、ちょっとは成長していく過程を描いています。

テンポがいい。かなり皮肉、アイロニーの利いた令和の女子高生たちのセリフ。エンディングに向けた高揚感と失望感の交差。そういえば、バスに乗って東京と茨城県東海村を往復するシーンは、『リンダ リンダ リンダ』の女子高生たちがバンドの練習するためにバスに乗っているシーンと被るものがあります。それぞれ彼女たちがいったい何を考えているのか、考えていないのかを見ている側の僕らに考えさせるようなシーン。

 

 映画、よかったんですけど。還暦過ぎの老人の聴力では、女性の声、セリフが(iPodS収音機能を使用しても)聞きづらい。せめて、ラップの部分だけでも字幕がほしかったと老人の独り言。ま、従って最近は邦画よりも字幕ついている洋画系のほうがセリフはフォロー出来たりして。

「・・・お前にとっちゃ私は超カス。舌っ足らずなダサいオタク? しかし言語野は太宰治、押すよ烙印、人間失格。どこに行ったよ?コンドーム。藪ん中?そりゃ芥川?ここ東海村。こんな時間になんの用だよ、聞かねぇお前の甘い御託。弱者いたぶって楽しいか?どうなってんの?おまえモラル」


 


というラップを朴秀美が矢口ミルクに唄いかけるんだけど、映画を観終わってパンフにセリフが載ってたんで分かった体たらく…。


 主人公の3人の女子高生と別れるのが残念な気持ちになって()、観終わって、KINDLEで原作をダウンロード。中国に戻る新幹線と飛行機の中で読了しました。なるほど、やっぱり原作小説のほうが、出来事は過激な部分が多く、そうだよね、扱っている遺法薬物が大事な小道具であれば、こういう展開にはなるな、という部分は映画ではありませんでした。日本映画でロードショーするには難しい場面も多し。その分、リアルなラップ、音響が映画のストーリーをテンポよく加速させて娯楽的な作品に仕上がっています(とはいえ、年齢制限 PG12/12歳未満の鑑賞には保護者の助言が必要 な作品)。


 作者の波木銅は、 2021年、『万事快調〈オール・グリーンズ〉』で第28回松本清張賞を受賞しデビュー。

受賞時の紹介では「弱冠21歳の現役大学生」で作品は満場一致で受賞し、荒削りながらも勢いとセンスが高く評価されたとのこと。なるほど、文章の疾走感は、切り口や文体はまったく違うとは思うけど、HIRO君的に表現するのならば「令和の”村上春樹“」ともいえるかな、と読みながらおもっていたら、作中に村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』の有名な冒頭「完全な文章などというものは存在しない。完全な絶望が存在しないようにね。」というのをパロディにした、完全な勃起について一考察があり、ついほくそ笑んでしまい申した。


 それと、第三の重要人物、マンガオタクの岩隈真子役は、やはり原作通りに太めの役者さん(最低でも体重は100㎏以上ほしい())にしてもらいたかったな。吉田美月喜が『ルックバック』の京本役の声優さんということで親近感はありますが、いかんせん可愛さは隠せない。もっとネクラじゃないと、なんかこの諧謔・青春映画には似合わない気がしました。けど、やはり興行的には主人公二人も有名な若手女優さんを選ばざるを得なかったんでしょうね、南沙良のラップもへたうまな感じはよかったですけど…。


 映画を観ながら、本筋とは違うのですが、主人公が即興ラップを展開、詠んでいる場面を見ていて、ふと還暦を過ぎて、漢詩まがいのなんちゃって定型詩を作り始めた自分とすこし重なりあう感じがしました。

なんちゃって漢詩は、現代、今を生きる太戸呂氏の日常を詠みながらも、ちょっとは漢詩の技法・約束に近づけようとして(少なくとも、現代中国語でテンポよく読める前提で)押韻・脚韻、平仄などにはできるだけ合わせようとしています。 ラップでも押韻(ライム)、脚韻(ライン末尾の韻)、頭韻(行頭の韻)とかパンチラインやもちろんストーリー性も中にいれないといけない。李白や杜甫が現代にやってきたら、すごいラッパーになるんじゃないかと、思ったりして映画を観ていました(少しの、ほんの瞬間だけど)。


 ということもあり、チンタオに戻って朝の出勤でオフィスにいく1.5㎞ちょっとを歩きながら、ケツメイシの「さくら」を聴きながら、なんとかラップの部分を憶えて日本にもどったらカラオケで唄いたいなと思うアラ還ジジイでした()

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by eachkotobuki | 2026-03-08 23:40 | 映画

いつかは定住を夢見ながらまだまだ続く、中国の窓から覗くノマド記録。


by 隣野太戸呂